最近、鬱の傾向を持つ患者さんが増えています。社会的背景を考えればいくらでも、その理由は出てきますが、自分の心と体が思い通りにならないと感じ始めた時が治療時です。早め早めの対処法をご存知でしょうか。
鬱や神経症は鍼灸の適応症です。薬を飲まなくてもコントロールできるのが、あなたの心であり、治療が及ばない部分に関しては、なぜなのか答えを求めていくのが目指すべき未来です。しかし、診断を受けた時点で、すでに極度の脳疲労状態である場合は少なくありません。真面目に悩む人ほど精神科にかかることに躊躇したり薬を飲むことに罪悪感を抱くことが多いのも事実です。ただ、この脳の疲労が実に体やエネルギーの影響を受けやすいもので、睡眠や多忙による食生活の乱れがベースにあります。その背景には生活や仕事上の困難を一人で背負い込まなければいけなかった孤独感や徒労感があり、その無力感の上に身体的な疲労状態が重なると鬱状態になりやすいように思います。
心の問題は、身体的な理由がかなりの割合を占めていて、脳の働きが腸の働きと密接(腸によるセロトニン分泌など)であるため常に食の影響を受け続けていること、疲労や古傷による頸椎の凝り歪みが頭部への血流障害を生み出すこと、頸椎の歪みは歯の治療や過度の交感神経の過緊張による噛み締めで顎関節にも影響を与えていること、顎関節の働きは歯への影響もあり歯は脳と密接に関係していること等、際限なく原因が体に還元されていくと考えています。もちろん人間関係や環境の問題もありますが、思考による新たなものの見方を提供する役割も脳と体の力です。それらを放置して抗精神薬を使う事は、束の間の助けにはなり得ても、長期的に本質的な体の冷えを生み出す原因を放置することになり、悪化は免れません。
家でできることは、まず最近はどんな物を口にしているのか振り返ることです。
簡単に口にできる、シリアルやレトルト、菓子パン、甘いものや冷凍食品、清涼飲料水などをチェックしてみてください。低血糖を引き起こし鬱を引き起こします。いきなりやめられなくても、食べた後調子が良いかチェックしてみてください。砂糖、人工甘味料、添加物などは脳を興奮状態にするため一時的に元気になるような錯覚を起こします。子供は特に食べ物の影響を受けやすいものです。落ち着きがない、注意散漫、忘れ物が多い、などはADHDなどと言われたりしやすいですが、改善の余地はあります。
ストレス下おいてはビタミンやミネラルの大量消費が生じます。ただでさえ、砂糖の代謝にはビタミンcを消費してしまうなど偏った食事に栄養素を必要とするのに加え、必要とされるビタミンミネラルの量が倍増されるのです。そして、野菜をとったつもりでも、従来の野菜と比べ、圧倒的に最近の野菜の栄養素の量は低下しています。これは土壌の問題です。ですから、現代人は常に栄養素が不足していると考えると、食事や間食に偏った食品を取り入れる余裕は体にないことがわかります。
栄養素を補い、エネルギー回路が機能するようになったら、体の歪みや、エネルギー治療で波動を調整していくと良いでしょう。エネルギーの調整には様々な方法がありますが、他者を介入させた治療を受けることをお勧めします。それは冒頭にあげた、一人で抱え込んできた苦悩をシェアする場にもなりうるし、どこにその苦悩を押し込んでいるか本人は気付いていない場合がほとんどであるからです。体をどのように酷使してきたか、第三者の目で解読し、それを体から自ら拾えるようになることが治療の目的にもなります。
その上で、軽い運動や趣味など外への働きかけが有効に生きてきます。間違えて欲しくないのは、抗精神薬で上がっていた気分は平常心ではないことです。日常は気分が落ち込んだり、逃げたくなるものが潜む場であり、それに足をこともたまにはあります。そこで切り替えができるかどうかの道具は、上記にあげたような食事の知識やエネルギーの取り込み方など、自らの手の内に持っているべき手段となります。動けなくなる前に予防する。それができるのは自分の心や体の訴えかけに真摯に対応しようとする毎日の積み重ねです。薬のように急な変化はおこらないかもしれません。それでも、細胞代謝のレベルで体は見えない働きを常にしています。鬱は自我の肥大化状態とも言えますが、意識を固めずに体の感覚を知るほどに開いていくことが回復の証ともなるでしょう。