無意識が運ぶ体

体は無意識に働いています。
心臓を動かすのにいちいち意識せずとも働いてくれているのです。
呼吸もいつのまにかしていますし、
皮膚も共に呼吸し、老廃物を排泄し、常に新しい皮膚に生まれ変わってくれています。
どんな人の体も片時も休まず働き続ける正直な働きものです。
そうです、持ち主の性格や行いに関わらず体程正直な存在はいないのです。
問診で聞く患者さんの言葉も大切ですが、体は語らずとも雄弁にすべてをモノ語ります。

表層の意識で生活する私たちは自分のことは自分でコントロール出来ると思いがちですが、体は表層意識で動いているものではないのでそこにギャップが生まれます。
いつ間にか衰えていく体、突然痛くなる体、病。
無意識的な存在の自分と表層意識の自分が遠ければ遠い程、体と自分の距離が生まれます。
体はどんな時も無意識の自分が生み出すものであり無意識の自分が働かせるものだからです。
意識の届かない自分が生きる意思を持って心臓を動かし呼吸をしています。
その反対側で、やりたくないことを我慢してやっている無意識の自分が体にブレーキをかけて
胃を痛くしたり怪我をしたりしています。
無意識の世界の自分は正直です。ですが、無意識の自分が本当は何を望みどのように感じているか完全に把握し言葉にできる人はいないでしょう。
ただ体は語っているのです。
体はその人の無意識の歴史の実在ですので、本人よりもはるかに雄弁です。
ただその声はとてもとても小さな声で、耳をすまし、全身全霊で聞く姿勢を持たないと話してくれません。
私は、そんな体の声を拾い上げて、聞こえる様な声にして患者さんに語る役割と、体と魂が喜ぶ声になるように患者さんとともに取り組むのが生業ですが、10人10色の体の個性に出会うのが本当に楽しいのです。

体は人間に残された最高の自然で、話をよく聞けば実に素直な理解者でもあります。
体を治す旅は、自分のこれまでの無意識下にあった感情や欲求を知る旅です。
自分に見えないものを見る勇気、すべての原因を自分のうちに認める潔さ、きっと色々なものと向き合うことになるでしょう。でも、それは自分の魂の成長のきっかけにもなり、霊的な好奇心をくすぐる刺激的なものとなるでしょう。